久しぶりにアンティーク懐中時計の紹介です。
以前、アメリカのハミルトン社製のグレード950を紹介しました。
グレード950は、贅沢な素材を使用して高度な機構、仕上げ、調整を施した高級&高精度機でしたね。
今回のグレード996は、素材や仕上げのランクを下げて価格を抑えつつも精度は良い物を!
という、庶民…というか普通の鉄道職員にとって、ありがたかったと思われる機械です(鉄道時計としての認証を受けています!)。
それではさっそく見ていきましょう。
まずは文字盤側から。
うん、なかなか綺麗ですな!
おなじみポーセリン製のダブルサンクダイヤルで、欠けは見当たりません。
ただ、5時&8時&11時当たりにうっすらとヘアラインがあります(ほとんど気になりませんが)。
ポーセリンは、ちょっとした衝撃や、急激な温度差でもヒビが入ってしまうようなものらしいです。
気を付けないと…。
インデックスは手書き…ではなくプリントでしょうか。メリハリの効いたとても見やすい、そして可愛いフォントです。
また、外周の赤い分表示が良いアクセントになっていますね。
それから、青焼きのハンド(針)の造形が素晴らしい。
複雑な曲線が組み合わさっていて、とても手間がかかっています。
そしてお待ちかねのムーブメント!
うむ、美しい…。
まず目を惹くのは受板全体にほどこされたダマスキン模様、丸穴車&角穴車の装飾。
光の当たり方で表情がキラキラと変化します。
仕様を細かく見ていきますと…。
19石の仕様で、主要な歯車の軸受けの石はゴールドシャトンを使用したビス留めセッティング。
さらに、ジュエルドモーターバレル(回転香箱)、チラネジ&ミーンタイムスクリュー付きのバイメタル切りテンプ、ブレゲ巻き上げヒゲ、スワンネック緩急針、ダブルローラー、5位置調整…
てんこ盛りの高精度仕様ですね全く(*´Д`)
この写真ではちょっと見にくいですが、アンクルの爪石がサファイア(サファイアパレット)だったりもします。
これで廉価版だっていうんだからもうね。
グレード950と比べてどのあたりでコストダウンしているか、いくつか挙げてみましょう。
・まずは石数…23石→19石
・シャトンの形状…ムーブメントの写真を見ると分かりますが、2番車のシャトンとその他3番、4番、ガンギ車の物で形状が違いますね(950は全て2番車と同じ複雑な形状でした)。
・歯車の材質…金製→真鍮製
・仕上げ…歯車の仕上げをみると、2番車のみがスポークを円柱状に仕上げられています。スワンネックは鏡面に磨かれてはいるものの、面取りはされていないです。
んー、パッと見はこれくらいかなぁ。
まぁ、こんな点は全然気にならないくらい素晴らしい時計なんです!
精度は良いしムーブメントの見ごたえもあるし…。
ちなみにムーブメントのシリアルナンバーから、製造年は1920年前後と思われます。
こちらのサイト→https://pocketwatchdatabase.com/で検索しました。
いつもの台詞ですが、製造から100年経っているとは思えませんよね。
それからこのグレード996なのですが、他のモデルに比べて生産数が少ないと推定されています。
そのため、オークションなどで時には石数が多い物よりも高く取引されるようですw
自分は当分手放す気はありませんが、珍しい現象ですよね。
素敵な一品、大事にしていきます!